「食べ物がしっかり噛めない」
「笑顔で人と話せない……」
50代で歯がボロボロになると、食事の楽しみが減るだけでなく、コミュニケーションにも支障をきたすようになってきます。
そこで本記事では、50代で歯がボロボロになってしまう原因を解説し、治療法についてご説明します。
歯の健康を取り戻すだけではなく、今後の体の健康寿命を伸ばすためにもぜひ参考にしてください。
50代で歯がボロボロになると将来的にどうなるのか?
50代で歯がボロボロになると、将来的に下記のリスクがあります。
- 人との関わりに支障が出る
- 食事を楽しむことが出来なくなる
- 低栄養になり要介護のリスクが高くなる
- 全身疾患のリスクが高まる
このように、歯がボロボロの状態は見た目だけではなく、健康に支障をきたす恐れがあります。以下では、これらが起こる理由について解説します。
人との関わりに支障が出る
歯がボロボロの状態は、見た目の自信を低下させ、社交生活に影響を与えます。歯の状態が悪いと、人と会話する際に無意識に口元を隠したり、笑顔を控えめにしたりする傾向が出てきます。
たとえば、友人との食事会や職場での会議、家族との記念写真撮影など、本来なら楽しいはずの場面でも緊張や不安を感じ、自然な交流を避けるようになってしまうのです。結果として、人間関係の質が低下し、社会活動の幅が狭まってしまう可能性があります。
食事を楽しむことが出来なくなる
歯がボロボロの状態だと、食べ物をしっかり噛めなくなり、食事を楽しむことが出来なくなります。硬いものや繊維のあるものが食べられなくなり、外食のメニューも制限されるようになります。
食事にストレスを感じるようになると人との交流も減ります。食事を楽しめなくなり、歯を大切にしなかったことを後悔している60-70代の患者さんはとても多いです。
低栄養になり要介護のリスクが高くなる
歯がボロボロの状態では、食事が炭水化物中心の偏った内容になり、将来の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
歯で噛めない食材が増えると、自然と柔らかいうどんやご飯、ケーキなどの炭水化物の割合が多くなり、肉類や野菜が不足しがちになります。このような偏った食生活では、必要な栄養が十分に摂取できません。
低栄養の状態では加齢による筋力低下が加速するため、将来的に要介護のリスクが増加します。
全身疾患のリスクが高まる
歯がボロボロな状態は、全身疾患のリスクを高めます。
たとえば、口腔内の歯周病菌によって起きる歯茎の炎症が、糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞などの重大な全身疾患のリスクを高めることが分かっています。
また、歯がしっかり噛めない状態では認知症などのリスクが上昇するという研究もあります。
このように歯が原因で重大な全身疾患が引き起こされることは理解しておいた方が良いでしょう。歯の健康は全身の健康状態と密接に結びついているため、しっかりと治療することが重要です。
50代で歯がボロボロになる原因
50代で歯がボロボロになる原因には、さまざまな要素があります。
主な原因としては、
- 虫歯
- 歯周病
- 破折(はせつ)
の3つです。
これらによって、歯がどのようにボロボロになっていくのか、以下で解説します。
虫歯
50代になると、歯根部分や過去の治療箇所での新たな虫歯が発生しやすくなり、重症化するリスクが高まります。
とくに問題となるのは、加齢による歯茎の後退で露出した歯の根元部分での「根面う蝕」や、過去に治療した歯が虫歯になる「二次う蝕」です。これらを放置すると、歯の神経が壊死したり、最悪の場合、虫歯が大きくなりすぎて差し歯もできなくなり、抜歯が必要になったりします。
実際に、日本人の抜歯原因の29%が虫歯によるものです。
※二次う蝕とは…虫歯治療で詰め物や被せ物をした歯が再び虫歯になること
※根面う蝕とは…歯の根元(歯根)にできる虫歯
歯周病
50代では歯周病の進行が深刻化し、歯を失うリスクが大幅に高まります。加齢に伴って歯周病は自然と進行していくため、40代と比べて50代では症状が悪化している人の割合が明らかに増加します。
実際、日本人の抜歯原因の37%が歯周病によるもので、虫歯よりも高い割合を占めているのです。このことからも、歯周病は50代以降の歯の健康に大きな脅威となることがわかります。
破折
歯の根の破折は50代で頻発する深刻な問題で、多くの場合抜歯となります。とくに、過去に神経を取った歯や、幼少期からの虫歯治療歴がある歯は破折しやすく、そこから細菌が侵入して腫れや膿形成を引き起こします。
たとえば、小学生の頃に虫歯治療を受けた歯は、その後も二次カリエスや根管治療を繰り返し、50〜60歳で歯根破折により抜歯に至るケースが多く見られます。
実際、破折は抜歯原因の18%を占める重大な問題なのです。
50代で歯がボロボロの場合の治療方法
歯がボロボロであっても、抜歯が必要とは限りません。治療して残せる歯は残し、残せない歯は抜歯をして歯を入れる手段を検討します。
非抜歯の治療 | 抜歯ありの治療 |
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・詰め物 ・根管治療 ・歯周病治療 ・歯冠長延長術 | ・インプラント ・ブリッジ ・歯の移植 ・入れ歯 |
具体的な治療内容については、以下の記事で解説しています。
50代で歯がボロボロ…歯医者に行けないと悩む方へ
歯の状態がボロボロでも、適切な治療により、健康と自信を取り戻せます。
ただ、50代での歯の問題は全体的な全顎治療となるケースが多いです。そのため、いきなり治療を開始するのではなく、詳しい検査や治療計画を立て、患者さんの同意後に治療を開始するような歯科医院が望ましいです。
歯の状態への恥ずかしさや不安もあるかと思いますが、将来的なリスクを防ぐためにも、ぜひ治療をはじめてご検討ください。