「神経を抜いた歯は寿命が短くなると聞いたけど本当?」
「神経を抜いた歯が限界を迎えた時、どんな治療法があるの?」
歯の神経を抜く治療(根管治療)をおこなった歯は、自然歯と比べて強度が低下するため、寿命が短くなります。
本記事では、神経を抜いた歯の寿命に関する正しい知識や、寿命を延ばすためのケア方法、そして寿命を迎えた後の治療選択肢について詳しく解説します。情報を参考に、お口の健康管理にお役立てください。
歯の神経を抜かなければならない状態
歯の神経を抜かなければいけないのは、歯髄に炎症や感染が生じているケースです。歯髄は歯の内部にある神経や血管を含む組織で、これが傷んでしまうと激しい痛みや腫れ、膿などの症状が現れ、治療が必要となります。
具体的な状態として、以下の3つがあります。
- 急性歯髄炎(きゅうせいしずいえん)
- 歯髄壊死(しずいえし)
- 根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)
神経を抜く(根管治療)については、以下の記事も参考にしてください。
神経を抜いた歯は寿命が短くなります
神経を抜いた歯は、自然な歯と比べて寿命が短くなる傾向にあります。しかし、条件が複雑なため一概に寿命が何年とは言い切れませんが、根管治療後10年というのが一つの目安になります。
歯の状態や患者さんの習慣等も影響するため、5年持たない場合もありますし、20年持つ場合もあります。しかし、神経のある健康な歯と比較すると歯の寿命が短いというのは、歯科医師としての経験上も確かです。
歯科医師の中でも意見が分かれることがありますが、「失活歯の寿命が生活歯より短い」ということに関しては大多数の歯科医師が同一の認識をもっていると思われます。
歯の神経を抜くと寿命が短くなる理由
歯の神経を抜くと、基本的に歯は弱くなります。根管治療をおこなうことによる構造的な問題と、神経がなくなることによる感覚的な問題があります。
以下で、より具体的に解説しますので、神経を抜く場合は、以下を参考にしながら日常生活に注意してください。
歯が割れやすくなる
歯の神経を抜くと、歯が割れやすくなります。これは、根管治療の過程で歯の内部を大きく削って神経を取り除くため、歯の構造が弱くなってしまうからです。
特に奥歯は、食べ物を噛む際に大きな力がかかるため、歯根(歯の根っこの部分)に亀裂が入りやすく、割れてしまうケースがあります。特に、根管治療を複数回行った歯は歯質が薄く状態が悪くなりやすいです。
そのため、根管治療の際に歯質の切削量を最小限にする、何回も根管治療をしなくて済むよう成功率の高い治療を受けることが重要です。
根尖病変
神経を抜いた歯は、根尖病変(歯の根の先に起こる炎症や感染)のリスクがあり、これが歯の寿命を縮める要因となります。一番初めに神経を抜く時に、適切な根管治療を受ければ予後は良いです(成功率90%程度)。
しかし、日本の保険診療でおこなわれる根管治療の成功率は約50%といわれています。つまり、半数は治らないのです。
症状が改善されない場合は、抜歯の提案をされることが多いのが現状です。
痛みがないために虫歯の発見が遅れる
神経を抜いた歯は、虫歯の発見が遅れてしまうために寿命が短くなる傾向があります。神経がないので、痛みなどの感覚がなくなり、虫歯を早期に発見することが難しくなるためです。
仮に異常が生じても痛みを感じないため、気づかないうちに症状が進行してしまいます。
結果として、大きく歯を削らなければいけなくなったり、最悪の場合は抜歯をしなければいけなくなったりします。
神経の抜いた歯を長持ちさせるポイント
歯の神経を抜いても、できるだけ長持ちさせる方法はあります。
特に大切なのは、下記です。
- 精密根管治療を受けられる歯科医院を選ぶ
- 根管治療を最後まで続ける
- 質の良いクラウン(被せ物)を入れる
- 治療後は定期検診に通う
以下で、それぞれの方法で神経のない歯が長持ちする理由について解説します。
精密根管治療を受けられる歯科医院を選ぶ
神経を抜いた歯を長持ちさせるには、精密根管治療が可能な歯科医院を選んでください。一般的な根管治療では細菌が残存したり、過剰な歯質の切削により歯が弱くなったりするリスクがあるためです。
質の高い治療を行う歯科医院を見極めるポイントとして、下記を確認しておくと良いです。
- ラバーダムを使用した治療
- マイクロスコープ完備
- ニッケルチタンファイルを用いた最小限の切削
- バイオセラミックを用いた根管充填
安心して根管治療を受けるためのポイントについては、以下の記事でも解説していますので、そちらも参考にしてください。
根管治療を最後まで続ける
根管治療は、必ず最後まで継続してください。治療を中断したり、予約間隔が空きすぎたりすると、適切な効果が得られず、歯の寿命に悪影響を及ぼす可能性があります。
一般的な根管治療では、歯の内部を完全に消毒・洗浄するために複数回の通院が必要です。1回の治療では完全な殺菌が難しく、継続的な通院が欠かせません。治療を中断すると、細菌が増殖し、感染のリスクが高まってしまいます。
精密根管治療では1−2回で治療が完了します。当院でも同一歯の根管治療が3回以上かかることはごく稀です。
質の良いクラウン(被せ物)を入れる
神経を抜いた歯を長持ちさせるためには、質の高いクラウン(被せ物)を選びましょう。クラウンの質は根管治療の成功率に影響を与えることが分かっています。
クラウンの質が悪いと、成功率が低くなります。つまり、細菌が侵入するなどして寿命が短くなるのです。
クラウンの治療結果は銀歯やレジンよりもセラミックの方が優れています。
治療後は定期検診に通う
根管治療をおこなった後は、定期検診に通ってください。神経のない歯は痛みを感じにくいため、問題が発生しても自覚症状が現れにくく、症状が進行してしまいやすいからです。
推奨される検診間隔は3ヶ月に1回です。これにより虫歯や歯周病のリスクを軽減し、問題を早期に発見・治療できます。
歯の神経を抜いた後に問題が起きた場合の対応
神経を抜いた歯に問題が生じた際の対処法は、症状によって異なります。
下記に症状別の処置についてまとめました。
歯の状態 | 処置 | その後の対応 |
---|---|---|
歯根が割れている | 抜歯 | インプラントブリッジ歯の移植など |
根尖病変がある | 再度の根管治療外科的歯内療法 | セラミッククラウンなど |
いずれにしても早い段階での対応が大切になりますので、問題が起きた際は、早めに歯科医院を受診してください。