根管治療はどのような場合に必要?メリット・デメリットは?

「歯が痛くて根管治療を勧められた…本当に必要?」

「根管治療以外の選択肢はないの?治療後の経過が心配…」

歯の神経が死んでいたり、重度の虫歯や歯周病がある場合には根管治療が必要になる可能性が高く、歯髄に細菌感染がある場合には根管治療が必要です。

本記事では、根管治療の必要性、メリット・デメリット、代替治療、そして治療後の経過について解説します。

根管治療が必要になる症状

根管治療は、歯髄と呼ばれる神経や血管を含む組織が感染していたり炎症していたりする場合におこなわれます。歯髄が炎症を起こすと、痛み、腫れ、膿などが生じて自然歯を残すことが難しいためです。

とくに根管治療が必要となることの多いケースとして、以下の3つがあります。

根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)歯根先端部の炎症
急性歯髄炎(きゅうせいしずいえん)歯髄の急激な炎症
歯髄壊死(しずいえし)歯髄が死んでいる状態

上記のほか、重度の歯周炎、歯の向きを大きく変える治療を受けた場合、歯の破折により歯髄が露出した場合、移植した歯などの場合も根管治療が必要です。

根管治療のメリット・デメリット

根管治療の主なメリット・デメリットは以下のとおりです。

根管治療のメリット根管治療のデメリット
・自然歯を残せる
・現状の痛みがなくなる
・感染がなくなる
・新たな虫歯に気づきにくい・治療回数が長い(保健診療の場合)

以下では、それぞれのメリット・デメリットが生じる理由について解説します。

根管治療のメリット

根管治療の最大のメリットは、天然の歯を残せることです。虫歯が進行し、歯髄炎になった場合でも、根管治療によって自然歯を残せます。

また、根管治療は激しい歯の痛みを取り除く効果もあります。

症状がない場合においても、根管治療によって感染がなくなるメリットがあります。

そのため、当院ではレントゲン等で歯根の感染が認められる場合であれば、根管治療を推奨しています。

根管治療のデメリット

根管治療の大きなデメリットとして、新しい虫歯に気づきにくい点があります。

通常、虫歯の痛みは神経が感じるものですが、根管治療をすると神経による伝達がおこなわれなくなるからです。

また、根管治療のほとんどは虫歯がひどく進行してしまった場合におこなわれるため、歯を大きく削り、かぶせものをしなければなりません。そのため、治療後に歯が脆くなってしまうケースがあります。

なお、治療回数が長いことも一つのデメリットといえますが、クリニックによって異なります。保健診療の場合は数回の通院が必要になることが多いですが、自由診療の当院の場合は最短1回、ほとんどの場合で2回以内の治療で終わります。

根管治療をすると歯の寿命は短くなる?

研究によると、根管治療をした歯(失活歯)の10年生存率は約60%程度とされています。根管治療をした歯は将来的に破折のリスクが高くなりますが、これは根管治療自体が歯の寿命を短くするわけではありません。

寿命が短くなる理由は「根管治療をしたから」ではなく、「根管治療が必要になるほど歯が悪化してしまったから」です。

感染がある場合、根管治療は避けられませんが、治療後の歯の寿命は以下のような様々な要因に左右されます。

  • 補綴物の種類(銀歯よりもセラミックの方が生存率が高い)
  • 治療の技術力(無菌的な根管治療の成功率は90%程度ですが、日本での平均的な成功率は40%程度)

したがって、根管治療が必要になった場合はより質の高い治療を選択することが重要です。適切な治療と術後のケアが歯の長期的な保存に不可欠です。

根管治療後に痛みが出る原因は?

根管治療後に、痛みが生じるケースがあります。これは、治療の工程によって仕方なく出てしまうものと、技術力によるもので分かれます。

以下では、根管治療後によくある痛みの原因について解説します。

根尖刺激による一時的な痛み

根管治療によって、治療後に一時的な痛みが生じることがあります。根管治療の過程で、正確な根管長を測定するために、根尖部に触れる必要があるためです。

この痛みは、根尖部への刺激による炎症反応と考えられます。ただし、多くの場合は治療後、数日で痛みや違和感はひいていきます。

状況によっては、抗生物質や鎮痛薬で症状をコントロールします。

薬剤充填時の圧力による痛み

根管治療後の痛みの一因に、薬剤充填時の圧力があります。

治療では細菌侵入防止のため、根管内に隙間なく薬剤を詰めます。この高圧充填が周囲組織に影響し、2〜3日程度の痛みを引き起こすことがあります。

しかし、バイオセラミックを使用した根管充填であれば加圧が必要ないため、圧力による痛みのリスクを軽減できます。

炎症による痛み

根管治療後の炎症は、必ず起きるものではありません。

特に初回の治療(抜髄)後に痛みが生じた場合、無菌的処置が適切におこなわれなかった可能性があります。たとえば、器具の滅菌管理不足、ラバーダム(防湿シート)使用時の唾液侵入、またはラバーダム未使用などが考えられます。

本来、完全な無菌環境で処置がおこなわれれば、細菌の侵入はなく、炎症も起きません。

一般的な根管治療以外の選択肢

一般的な根管治療以外にも、いくつかの選択肢があります。ただし、一般的な根管治療以外の治療ができるクリニックは限られています。

当院では「歯髄保存療法」「外科的根管治療(外科的歯内療法)」が可能です。

それぞれの治療内容について、以下で解説します。

歯髄保存療法

歯髄全体に感染が及んでいない場合、歯髄保存療法という選択肢があります。感染した歯髄のみを除去し、バイオセラミック材料で塞ぐことで健康な歯髄を残せます。

治療後は、ダイレクトボンディングやセラミック治療で歯を修復します。

外科的根管治療(外科的歯内療法)

通常の根管治療で治癒が見込めない場合、外科的根管治療(外科的歯内療法)という選択肢があります。

この方法では、歯茎を切開するか、一時的に歯を抜去して、感染した根尖部を切除します。その後、逆根管充填と呼ばれる処置で薬剤を詰めます。

マイクロスコープやバイオセラミック材料を用いる最新の技術と専門知識を用いれば、成功率の高い方法です。

(※マイクロスコープ等を使用しない従来法では、歯根を切断しても炎症が消えない可能性が高いです。)

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