歯医者に「歯を抜くしかない」と言われて悩んでいませんか?
当院にも「抜歯してインプラントにした方が良い」と言われた患者さんが、インプラント治療を受ける目的で来院します。
しかし、インプラント専門医の立場として、
安易なインプラント治療はおすすめしません。
インプラント治療が優れた治療法であることは確かです。
インプラントにより歯科治療に革命が起きたと言っても過言ではないと思います。
しかし、一方でインプラント治療によるトラブルが多く存在することも事実です。
歯を抜かなければ良かったと後悔しないためにどうすれば良いでしょうか?
本当に抜歯が必要なの
「歯を抜くしかない」
「抜歯してインプラントにする必要がある。」
そう言われた時に考えるべきことがあります。
「本当に抜歯が必要なのか?」です。
実は歯を抜かなければならない状態は3通りしかありません。
1歯根が縦に割れた場合
2歯質が残っていない場合
3歯が大きく揺れている場合
もしこれらに該当しないのであれば、その歯は治療の余地があります。
抜歯をせずに治療ができないか相談しましょう。
歯根が縦に割れた場合
歯根が縦方向に割れてしまった場合、残念ながら抜歯の対象となります。
割れた歯の治療法を模索している歯科医師も存在しますが、現在確立された治療法は存在しません。
そのため、歯根が縦に割れた場合には抜歯をしてその後どのような治療を受けるか検討する必要があります。
割れた状態は写真やレントゲン、歯科用CTなどで視認することが出来ます。
診断を不審に思う場合は、割れた様子を見せてもらってください。
歯質が残っていない場合
歯が大きな虫歯になった場合や横方向に割れた場合には、クラウンと呼ばれる被せ物(いわゆる差し歯)で歯を修復することになります。
しかし、この修復された歯を支えるだけの歯根(歯質)が残っていなければ治療ができないため抜歯の対象となります。
歯根を引っ張り出す矯正や、逆に歯茎を下げる歯周外科などの治療により歯を残すことができる場合もあります。
歯が大きく揺れている場合
歯周病が進行すると歯を支えている骨が吸収され無くなってしまいます。
ある程度であれば歯周病の治療により改善することができますが、骨が広範囲に無くなると治療をしても治りません。
レントゲン上で歯根と骨が全く接触していない場合には治療をしても治すことができないため抜歯の対象となります。
この状態だと歯と骨がくっついていないので、歯の揺れは大きくなります。
必要ないのに抜歯される?
残念なことに、実際に割れていない歯が歯根破折と判断されるなど、抜歯の必要がない歯が抜歯と診断されてしまうケースが多数存在します。
私個人の経験では、根管治療により症状が改善しない場合などが多い傾向にあります。
実際に私が過去に治療した患者さんの例ですが、患者さんは他院で「抜歯してインプラントしかない」と説明されたので、インプラント治療を受ける目的で受診されています。
赤い矢印の前歯2本を抜歯するという説明を受けたそうです。
確かに変色していますが、本当に抜歯が必要でしょうか?
レントゲンを見ても歯質は十分残っていますし、割れた様子もありません。
抜歯が必要な要素がないので、根管治療を行った後にセラミック治療により見た目を改善することにしました。
抜歯をせずに十分な治療結果を得られ、患者さんにも満足していただけました。
治療費も2本文のインプラント治療を受けるより遥かに安いです。
まずは歯の治療を検討しましょう
治療により健康な状態を取り戻せるなら自分の歯に勝るものはありません。
精密根管治療や歯周治療で歯を治療できるのであればまずは歯の治療を検討すべきでしょう。
残念ながら、歯が残せない状態である場合や、すでに歯が無くなってしまった患者さんにとってインプラント治療は非常に有効な選択肢になり得ます。
また、抜歯前で親知らずなど不要な歯がある場合には移植も検討出来ます。
良く検討して後悔のない歯科治療を受けるようにしてください。